4、x'mas イブの恩返し


私の人生の中で忘れる事の出来ない1つの出来事が、所長さんからここに来た当初の一万円は、私にとって生死を分ける一万円であった事は間違えありません。実際、200円しか所持していなかった私は、その一万円の大きさを心の底から重く受け止め、お金の有難みを嚙み締めました。そしてこの様に(その当時)仕事も続け、働く事の重要性も軽んじてはいけないと思う訳であります。即ち、人の関係の大切さ、役割、居場所(存在)生きる意味、人生の目的、目標、計画、そして夢を度々見ていく事の大切さを心に染みわたるのであります。そこまで考えさせて頂いたのが、ここの吉岡温泉のケアハウスでありました。私の筋道の中で大きな転機であったことは間違えありません。12月に入り、雪もそこそこ深みを帯び、「もうすぐクリスマスか・・・」雪の降る外の空気を深呼吸し(何か面白い事を計画しようか??)「そうだ仏・伊料理食材輸入専門商社だ!!」すぐさま副所長さんと交渉し「クリスマスイブ、仏・伊料理の食事会をやってもいいですか?」2日後返事が返ってきて「いいですよ!!」私は嬉しかったです。副所長:「一人で50人前作るんですか?」幹雄:「ビュッフェでやろうと思っております。調理場の一部で23日の夜、徹夜でやろうと思いますので宜しくお願い致します。」そして、食材の発注をしたのです。24日朝、事前に用意していた木製の折りたたみの椅子を磨き、きのこの入っていた木箱と白い麻布を使い、木箱には真ん中に4kgのイタリア・パルマ産の生ハムブロック、その左横にフランス・ブレス産の去勢鶏シャポンを右横には、きのこを中国産のトリュフ、カナダ産の黄色いきのこのジロール茸(あんず茸)、フランス産の紫色のきのこピエブルー(紫しめじ)そして、国産のエリンギを飾り、奥の背もたれの部分に自分で描いたデッサンを飾りました。朝から食堂の入り口は大賑わい。住居者:「こんなの鳥取に売ってないけどどこで買ったの?」幹雄:「東京の品川です。取り寄せました。」  人だかりができ、「これは見たことがないが。」職員も集まって来た訳です。幹雄:「後でのお楽しみです。」 メニューはサラダはグリーンカールとルーコラセルバティカとラディッキオ・ロッソ・タルディーボ、プレコーチェ(トレビスの仲間2種類)、クレソンを混ぜ合わせたもの、その横にきのこ全種類ソテーしたものを別々に分けて盛り付け、その横にトリュフをスライスしオリーブオイルを上からかけオーブンで焼いて塩をしたもの、ドレッシングはバルサミコとオリーブオイルを混ぜたものを用意し、その横に、去勢鶏シャポンの丸焼き、その横で骨なしもも肉パルマ産生ハム丸々1本をシャポンと同様その場でスライスし、その横に徹夜で焼いた5種類3個づつ計15個のタルトをケアハウスにプレゼントしたのです。パーティーの最後、職員の間で「実に美味しかった、この生ハムはどうするのかね?」 幹雄:「持って帰ります?人数分カットしますよ。」笑顔を見ると嬉しくなってきましたね。大成功でパーティーの幕が閉じ、年末年始へと時が移り、正月番組を見ながら、所長:「雑煮は食うかね?」 幹雄:「大好物です。」そしたら出て来たのが東京で言う『おしるこ』びっくりしましたね。副所長:「この間のクリスマスパーティーあれ程の高級食材いくらしたの?」 幹雄:「私はここに来た時あらゆる面で助けられた。生死を彷徨っていたのです。お金以上の心です。私が口火を切ったクリスマスイブの恩返しです。」この数か月後予想もしないサプライズがある事は私はまだ分かっていなかった。