2、吉岡温泉のケアハウスとの出会い


鳥取市ハローワークの窓口に行き、日本全国を旅している最中お金が底を突き、なんとかして仕事を探さないといけない事情を説明したところ、『基本的に平森さんの場合、寝泊りは車の中、仕事は無職、即ち住所不定無職扱いになってしまい、仕事を紹介しづらい』とのコメントを頂きました。『でも待っててね、探してみるけん。』そして2日目の事です。(ハローワーク職員)『平森さん、平森さん面接してくれるところ見つかったんだが。』(幹雄)『勿論行きますお願いします。』午後3時に直接現場に行くようにと言われ、ケアハウス(老人ホーム)の当直の仕事だそうです。時間になり車を走らせケアハウスのある吉岡温泉に向かった訳です。面接が始まり仕事内容の説明を受け、勿論私は何でもやりますと答え面接が終わったのですが、所長がポケットの中から財布を取り出し、現金1万円私に手渡し、『これを持って逃げてもいい、まじめに働いてもいい、それに休みの日の食事代にしなさい。1日考える時間を与えるからよく考えなさい。』と従業員の寮を無料で貸してもらい、お風呂はケアハウスの大浴場を使っていいから。と私にとって一生涯忘れない深く心の広い思い出が残った訳です。東京ではありえない話ですよね。さて、仕事内容の方は、掃除一般、風呂掃除、食堂掃除、当直夜勤、配膳、下膳(お部屋で食べる方の分も)、レクリエーション活動の手伝いなど。そして、夜勤の日は、昼過ぎに起床して、よく図書館へ行きましたね。『粘土の採取する方法』という本にハマり裏山の土を採ってきて、土を水で溶かし目の細かいざるで漉すと砂利がざるに残り粘土は水に溶け下のバケツに落ちる訳です。次第に粘土は沈殿し上澄みの水を捨てて少なくなった上澄みの水が程よく蒸発したら粘土の完成です。その粘土で器を作ったり、オブジェを作って達成感を味わう事に気付き、芸術的な人生が目覚め始めたのは、ここ鳥取から始まったのも確かな話です。当直の仕事は、基本的に暇なのですが受付に来て睡眠薬を欲しがるお婆さんや眠れなくておしゃべりに来るご老人いつもの顔ぶれです。昼も夜も賑やかで明るさを感じていましたね。『所長さんへ感謝の気持ちとして、この場を借りてお伝えしたいです。その節は大変お世話になりました。あれからもう17~18年経ちますが、皆さんお元気でしょうか?近くを通った際は顔出しますので挨拶に参りたいと思っております。失礼致しました。2023.5.22現在。平森幹雄