2、また雰囲気の違う旅館での就労


白骨温泉は、山奥の本当に温泉しかない静かな温泉集落で、鳥の鳴き声や虫の鳴き声、そして、時々現れる野生のカモシカや危険なツキノワグマなども遭遇します。そしてまた、野生の山菜やきのこなど、緑豊かな自然に恵まれ、その様なロケーションの中に白濁の温泉が魅力的に存在する訳であります。およそ十数箇所の温泉旅館が二つの集落に分かれ点在し、白骨温泉の存在感即ち知名度をキープしているものと私は思っております。『静かで落ち着いた環境』という言葉そのものが白骨温泉にとっての一番似合った印象ですね。その十数箇所の温泉旅館の中のT旅館で私は就労としてお世話になりました。T旅館は、旧館と新館とが繋がっており、旧館は貫禄がありながら浅いたたずまいで、白骨の自然と調和して落ち着きがあり、作家の方の様に長期滞在には丁度いい環境だと思います。新館は、夕食を部屋で食べることが出来、小さなお子さん等家族で来られた方にお勧めです。お風呂は露天風呂が2つ内湯が1つ男性女性それぞれと言う事です。夜、露天風呂に入っていると『クー、クー』と野生動物の鳴き声が聞こえる事もあります。そうです、ニホンカモシカです。鳴き声の方を見てみると目が光っているのです。私は3か月位このT旅館にお世話になっていたので、カモシカに遭遇する事に関しては日常茶飯事でしたね。交通の便、スーパーマーケット、等の便利さから見ると物凄く不便な所ですが、逆に不便だからこそ、例えば山を下りて松本市街に行った時、街並みがはっきりと見え、例えば、街の有難みやその店の存在の意味合いが分かり易く、即ち、白骨温泉と比べているのでしょう。いつの間にか。そして、白骨に戻り仕事では夕方4時からお客様の食事の準備から始まり、お客様全員食べ終えたら下膳をし、一気にかたずけその日の仕事は終わり、温泉で疲れを洗い流し、同僚の部屋に行きビールを飲みながら色々な話をするのです。同僚は色々な各地から集まっており、宮城県、高知県、大阪府、長野県、そして私、東京都そんな具合です。次の朝になり朝ごはんの配膳、下膳が終わり、お風呂掃除チーム、部屋掃除チーム、そして私は、部屋掃除とジュース冷蔵庫の補充でした。仕事が終わると同僚の車でよく松本市街や塩尻市街に行ってましたね。この様に楽しい毎日を送ってましたね。一般的な温泉街は作り上げられた温泉街が多いですが、ここ白骨温泉は大自然の中にある自然と共存している点では、貴重な雰囲気であると思いました。