働く場所は変わりまして、大田区東海地区にあります大田市場、水産棟のオマール海老屋さんで働く事となりました。大田市場は築地市場に次ぐ2番目に大きな市場です。尚且つ比較的衛生的に綺麗です。市場の仕事は普通深夜1時~2時の仕事スタートが一般的ですが、ここのオマール海老屋さんは朝の6時スタートと出勤時間が遅く市場の中では珍しい方だと思います。市場の仕事は、品出しをし、重量を計り、配達ルートごとに荷物を整理し、伝票をもらい、商品と照らし合わせ、荷物を保冷車に積み込み、配達し,
重量を確認してもらい(検品)サインをもらったら、次のお客様の所で同じ繰り返しをします。全部配達が終わったら、会社に戻り伝票を事務員さんに渡す、これが1日の流れでした。仲卸の仕事は、様々な厨房を言い換えれば見学できる絶好のチャンスでもあり、配達に余裕があれば、厨房のコックさんと話をすることもしばしばありました。知的財産というものは目で盗み、肌で感じ、匂いはどうなのか? 食べてみて(舌触りは?味の変化、味の癖など)感じ取り、はじめて自分のものになると思っております。いうなればぞくにいう一流レストランの厨房を覗かせて頂いたという実にラッキーな職場環境でした。尚且つ海老の知識も勉強になり、例えば、長期間海老を水槽の中に入れて置くと、餌を食べていないせいか海老の身が細く痩せてしまいます。歩留まりが悪くなってしまうのです。歩留まりとは、食材全体に対して食べれる部分の割合です。歩留まりが悪いと皿の上の料理の見栄えも宜しくないと言う事なのです。配達の行くところ行くところ勿論プロの職人さんの方々がお客様だったもので、当然ながら10人十色に対し、どれが正解というものはありません。理にかなっているかかなっていないかの世界です。意味のあることを行動として表れている環境でしたのでとても勉強になりました。このように段々会社に馴染み始めた頃、確か雪の日でしたかね、急ぎのお客様が2件ございまして、高速道路を使ってもいいという条件で、私はその仕事を引き受けてしまったのです。場所は江戸川橋と赤坂ですね。時間的には首都高速平和島から江戸川橋まで15分江戸川橋から下道で飯田橋、九段下経由で10分で着くように頼まれ、かなり無理をしたのですが、江戸川橋はなんとかなりました。問題は赤坂です。少し気が緩んだせいか、雪の日なのに伝票を整理しながらわき見運転をしてしまった、その直後、目の前の信号機が赤だったのです。今でも覚えてます、皇居の前の内堀通り千鳥ヶ淵と半蔵門の間の信号機です。急ブレーキをかけた瞬間、雪道だったもんで片輪走行を30m位し、車は横転してしまったのです。21歳の時の出来事です。ラジオでも私の事故情報が流れ、迎えに来てくれた先輩の車で残りの納品を終わらせるのですが、行くところ行く大体ラジオを聴きながらコックさんは仕事しているので、そのラジオも私の事故の事が流れるんですよね。とても恥ずかしかったのですが、笑われながらも「お疲れさま。」とコックさんに肩をたたかれ言われた何とも言えない不思議な1日でした。